霊的なものを巡って



展示概要
日本人とフランス人のアーティスト達による作品展です。

アルメル・ケルガール/写真家
アルメル・ケルガールの「あるフランス人家族の解剖図鑑」は、人類学者さながらの調査を元に一族の家系図を作り、家族ひとりひとりに焦点をあてポートレートを撮るアートプロジ ェクトである。 大家族に生まれたアルメルは、祖父母、両親、叔父叔母、兄弟姉妹、甥、いとこのみ含めても124人の親族を持ち、家族間の絆や何か目に見えないつながりのようなものを常に感じてきた。科学的実証の精神で一族の歴史を描いた作家エミール・ゾラに感銘を受け、また、近年心理学と系譜学をかけあわせたプシコジェネオロジーと呼ばれる分野にも影響を受けている。家族のポートレートを撮り始めたのは2005年。寝室、書斎、居間・・・各人の持ち味を象徴する場所で撮影。この“調査研究”の登場人物達が、根底に流れる家族の物語をつむぎだす。はるか昔から続く一族の歴史物語を。そしてある日、アルメルは亡くなった祖父が自分と同じように家族のポートレートを撮っていたのを知る。全く面識のない祖父が、自分と同じように家族を登場人物にして楽しんでいたとは。自分は知らず知らずに祖父の未完のプロジェクトの完成を託されていたのではないか。祖父の古い写真との出合いが、このアートプロジェクトこそ自分のライフワークであるという確信を深め、アルメルは時を超えた共鳴と家族間の絆の意味を探り続けている。

角谷 啓男/陶芸家
焼き物の土は数十万年以上かけて花崗岩が風化して分解されて出来ている。その多くは川下へ運ばれゆっくりと海に堆積しプレートとなって沈み込みことだろう。沈み込んだプレートは地球内部を還流し溶かされやがて地表に再び現れる。これはまさしく焼き物そのものである。焼き物は既に地球全体が行なっているサイクルなのである。そして我々はその営みを人工的に行なっている。地球史を高速で回転するように。もう少し踏み込んでみよう。焼き物から見れば、焼き物自身が早回しではなく、僕らが早送りで次元を飛び越えて存在しているもの。焼き物という存在は僕らをワープさせる力を持っている。1980年北海道帯広市生まれ。2007年東京藝術大学修士課程陶芸専攻修了。サロン・ド・プランタン賞受賞。

クリステル・ゲラール/彫刻家
旅する彫刻家 – ニューデリー、リオデジャネイロ、パリ、ロンドン、そして東京 – 彫刻は、21年に渡り私の旅のよき友である。この友のおかげで数々の出会いや心震える瞬間を体験し、世の中をより深く知ることができた。同時に、様々な技法を学ぶ貴重な機会ともなった。私が初めて工房で制作を行ったのは1998年ニューデリー。2000年にリオデジャネイロに移り、彫刻家Marcus Sallesのアトリエでポートレートを学び、またパルクラージ美術学校にて偉大なブラジル人画家Gianguido Bonfantiの指導のもとでデッサンも始めた。私の最初のステップは目に見えない「ものごとの本質」を表現することであった。2004年パリに戻り、私はより内省的、直感的に制作するようになった。ブラジル人彫刻家兼画家Jaildo Marinhoのワークショップに加わり、鋳造や色づけの技術を学び、石膏やコンクリートでも作品を作った。私が身体の脆弱性とそこに宿る心や魂をどう解釈していくことができるかについて追究し始めたのが、この時期である。2009年から2013年には、ロンドンで制作を続け、2013年から2015年まではナントにてフリーで活動。そして2017年12月からは東京にて、1年の空白の後、彫刻の道具を再び手に取った。現在、陶芸家角谷啓男氏のアトリエで学び、「本質的なもの」に近づくため卵形をめぐる探究を続けている。これまで15のグループ展に参加。また、リオ、パリ、ロンドン、東京にて6つのアートイベントを企画運営。その他、5つの個展を開く。